公正証書は判断能力がないと作る事が出来ません。では、公証人はどうやって依頼人の判断能力の有無を判断しているのでしょうか。
まず大前提として自身の名前と生年月日、本籍地、住所及び職業を言えるかどうかが問われます。ここが言えなければ判断能力を失っているとみなされて公正証書を作成することはできません。
その関門がクリアできたら次は公正証書の内容を理解しているかどうかが問われます。今から作る公正証書がどのような内容で、何を目的に作られるのかを依頼人が理解しているかを公証人が尋ねてきますのでそれに答えられなければいけません。
では具体的にどのような質問がされるのでしょうか。
遺言、任意後見後見、死後事務委任についてそれぞれ分けて解説していきます。
まず遺言についてですが、大きく3つの項目について理解しているかどうかが求められます。
1つ目は自身の財産に何があるかです。どこの銀行に口座があるのか、証券口座はどこにあるのか、不動産はどこに持っているのか等です。
2つ目は誰にどれくらい財産を渡すか、です。例えば息子に現金を渡すという遺言を作ったとしたらその内容を大まかにでも公証人に話す必要があります。
3つ目は寄付をする場合、団体名とその団体がどのような目的で運営されている団体かを問われます。
次に任意後見についてですが、これは2つの項目について理解しているかどうかを問われます。
- 誰に後見してもらうのか、②どのような内容で後見してもらうか です。
①の誰に、というのは例えば息子なら息子の名前、団体ならその団体名が言える必要があります。
②のどのような内容で後見してもらうかですが、これは後見の内容について理解しているかどうかを求められています。後見は介護や身体的な世話をしてくれる契約ではなく、主に財産管理や身上監護を目的としています。難しい言葉でなくともどのような事をしてもらう契約なのかは言える必要があります。
最後に死後事務委任ですが、これも後見とおなじ内容①誰にやってもらうのか、②どのような内容なのかです。
遺言、任意後見、死後事務委任、それぞれ条文の詳細までは必要はないですが、基本的な事は言える必要があります。見慣れない言葉がたくさん出てくるので理解するのが難しい部分があり、依頼人もついふんふんと頷いてしまう事があるのですが、本当に理解しているか見極めないと、いざ公証人の前に言った時に何も理解していなかったことが発覚して公正証書が作れなくなってしまうという事もあります。
コミュニケーションを常にとり、分からないときはすぐにわからないと言ってもらえるような信頼関係をきづいていきたいですね。