現在では金融機関での多額の振り込みや定期預金の解約等、窓口での手続きでは原則本人確認が必須です。入院や介護で身体が不自由になった場合、銀行窓口や役所での手続きを誰かに代行してもらうためには、都度委任状を作成する必要があります。
このような問題に対処するための財産管理等委任契約書(以後、「委任契約書」といいます。)なのですが、一体誰を受任者にすればよいのでしょうか?
受任者が親族であれば安心して任せることができそうです。それに、無報酬でやってくれるかも知れません。
但し、委任契約書で受任者に代理権を与えるということは、代理権の範囲内とは言え「委任者(ご本人)の財産の管理や処分、委任者(ご本人)固有の権限を受任者に代行させる」ということです。
受任者が、推定相続人である場合、代理権を与えられた推定相続人(受任者)は、相続の際に有利な立場になり得る可能性があり、そのことが相続の際に他の相続人とのトラブルに発展することも考えられます。つまり、一人の推定相続人に代理権を与えること自体が相続の前哨戦となる可能性があるということです。
従いまして、並列する推定相続人が数名いて代理権付与により相続時のトラブルが懸念されるのであれば、推定相続人を受任者とすることは適当でないという考え方もあるでしょう。
このようなトラブルを避ける方法として考えられるのは、推定相続人と利害関係がない、信頼できる人や法律専門職等に報酬を支払って受任してもらうことも選択肢の一つではないでしょうか。
誰を受任者にするのかは、慎重に検討する必要があります。
前回の内容はこちら→もしもの時に役に立つ!財産管理契約について解説します